「チームでやりました」。よどみない自己PR。どこにも減点が見当たらないのに、聞き終えてなぜか確信が持てない。私自身、そんな面接を数え切れないほど経験してきました。
もし同じ経験があるなら、その違和感を気のせいと片づけないでください。場数を踏んだ面接官たちは、同じものを「借り物の言葉」と呼んでいます。回答は整っているのに、その人の経験とどこかつながらない。いまは模範解答のテンプレートがいくらでも手に入り、生成AIが面接対策を仕上げてくれる時代です。答えが整っていくほど、違和感に気づけること自体が面接官の技能になりつつあります。
この記事では、その違和感を確信に変える4つの道具をお伝えします。STAR法のA(行動)、シリーズ3本目です。
この記事のポイント
- 切り分けの2問:「あなた自身が決めて動いたこと」「あなたがいなければ、起きなかったこと」
- 深掘りの4語:なぜ・たとえば・具体的には・他には
- 行動の一段奥にある「判断」を掘る質問
- 深掘りを尋問にしない、ふたつの工夫
まず、「私たち」から「私」を取り出す
「チームで売上を2倍にしました」は、そこにいただけでも言える文章です。責める話ではなく、チームで働いてきた人の自然な語り方でもあります。だからこそ、切り分けは候補者の仕事ではなく、面接官の仕事です。
① 「その中で、あなた自身が決めて動いたことは何ですか」
② 「あなたがいなかったら、何が起きなかったと思いますか」
②は少し意地悪に聞こえるかもしれませんが、実際には候補者に活躍を語り直してもらうための質問です。具体的な貢献がすっと出てくる人と、答えに詰まる人の差が、はっきり表れます。
4つの口ぐせが、準備の外側に連れ出す
模範解答が用意しているのは、最初の一往復だけです。だから二の矢が要ります。難しい質問である必要はありません。
① なぜ:なぜその方法を選んだのですか
② たとえば:たとえばどんな場面がありましたか
③ 具体的には:具体的には何をどう変えたのですか
④ 他には:他に試したことはありますか
丸暗記した答えは、質問を少し変えるだけで止まります。実際に経験した人は、具体化を求められるほど生き生きと詳しくなる。盛られた話は、2〜3回の具体化には耐えても、5回には耐えられません。借り物の言葉かどうかは、この往復の中で自然と明らかになります。
行動の一段奥、「判断」まで聞く
もう一歩だけ深く。「他にどんな選択肢がありましたか」「なぜそれを選んだのですか」「うまくいかないと分かったのは、どの時点でしたか」。
行動そのものは、環境が変われば再現されないことがあります。それでも、選択肢を並べて選ぶという思考の型は、職場が変わっても持ち運ばれます。あなたの会社は前職と環境が違うからこそ、行動の奥の判断まで見ておく価値があります。
深掘りは、尋問と紙一重
ここまでの聞き方をそのまま実行すると、詰問の空気になりかねません。工夫はふたつで足ります。
① 冒頭で予告する:「経験を具体的に伺いたいので、細かく質問します」
② 興味として聞く:「そこをもう少し聞かせてください、面白いですね」
深掘りは、候補者を試す行為というより、その人をちゃんと見ようとする行為です。丁寧に掘られた面接は、候補者の側にも「ちゃんと見てもらえた」という記憶で残ります。
明日の面接では、まず切り分けの2問をシートに書き足すところから。4語はメモの端に書いておけば充分です。道具が手元にあれば、整った答えの前でも、もう印象だけで決めずに済むのではないでしょうか。
最終回のR(結果)では、「達成率120%です」の先を聞きます。数字を検証し、学びまで掘る聞き方です。